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2012年10月25日

第20回孔子学院講演会(講師:大谷通順先生)を開催しました

札幌大学孔子学院では、2012年10月21日(日)に、北海学園大学人文学部教授の大谷通順先生をお招きして「中国を知り、知らせること―『支那通』井上紅梅の軌跡―」と題して講演会を開催しました。
ご講演要旨は次のとおりです。
主に1910年代から1930年代における中国風俗の研究家で、「支那通」と呼ばれた一人、井上紅梅について論ずる。
井上紅梅は、戦後になってほとんど忘れられていたが、三石善吉及び勝山稔による研究により彼の事績と作品がようやくたどれるようになってきた。ただ、井上はじめ「支那通」とされた人たちが、真に中国を理解できているのか、その「理解」が正確なのかという問題が残されている。
井上紅梅は「多くの資料を駆使して支那風俗を考察した」と言われるが、彼の文章を考証してみると、『浪跡続談』や『清碑類抄』など数少ない史料をほとんど引き写して書いていることが分かる。これは井上の独自の研究成果ではなく、民国時代に大型の叢書が刊行された出版状況を背景に現有資料を借用したものに過ぎない。また、彼自身が過去に書いたものを、後になって何度も再録しているものも見られる。
しかし、一部に彼自身の言葉による支那風俗の活写も散見されるのであり、これが重要になってくる。例えば、彼は麻雀が日本に大流行する1年前の1924年に『麻雀の取方』を著しているが、その著作からは、彼が別の新しいものがあれば進んで取り入れるものの、自身で正統と思えるものがあれば、それを堅持していることが理解できる。
他方で、彼の言語能力に関しては、非常な多作であることから筆が早いことが見て取れるが、彼が翻訳した魯迅の『狂人日記』を見ると、その日本語訳は誤訳が多く、中には話の筋が変わってしまうほどのものもあるため、注意が必要である。
総じて、井上紅梅は他の「支那通」と違って、自身の考えをできるだけ排除して、ありのままの中国人・中国文化を伝えようとしたことが伺え、その点は高く評価していいのではないだろうか。(以上)

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